札幌市南区の「おもしろ遊便館」が伝えた郵便の新しい形

「こんなものが郵便で送れるの?」と、誰もが驚く変わり種郵便物がずらりと並ぶ博物館、「おもしろ遊便館」が札幌市南区にありました。この一風変わった施設を立ち上げたのは、渡辺信雄さん。郵便局の仕事を通じて培った経験を生かし、郵便文化の楽しさと可能性を探求したこの博物館は、まさに“遊び心”の詰まった場所でした。

ホタテの貝殻を利用した郵便

ホタテの貝殻を利用した郵便

日常の郵便が変わる瞬間

「おもしろ遊便館」の展示品は、私たちが思い描く郵便の常識を覆します。例えば、しゃもじや酒瓶、トイレのスリッパ(もちろん未使用品)、さらにはホタテの貝殻まで、普通の郵便物としては考えにくいアイテムばかり。渡辺さんが郵便局勤務時代に気づいた「郵便法の規定内であれば、形状や素材を問わずに郵便物として送れる」という事実を最大限に活用したアイデアの数々が展示されていました。

渡辺さんは、稚内郵便局での勤務時代、ホタテの貝殻を郵便物として送ることを思いついたそうです。「貝殻に穴を開けるのは大変でしたが、それもまた面白かった」と渡辺さんは語ります。さらに手紙を書いてから折鶴に仕立て、そのまま郵便物として出すという試みも行いました。これらのアイデアは、昭和62年の北海道新聞にも取り上げられ、その独創性が広く知られるようになりました。

稚内勤務時代の折鶴郵便

稚内勤務時代の折鶴郵便

郵便物に込められたユーモアと人間味

「おもしろ遊便館」は単なる変わり種郵便のコレクションにとどまらず、郵便を通じたユーモアや人間味が感じられる場所でもありました。渡辺さんは、地元新聞で見かけた人物にお祝いの手紙を送るなどして、独自の文通ネットワークを築いていました。こうした交流がきっかけとなり、博物館には全国各地から変わった形の郵便物が次々と集まるようになりました。

渡辺さんが特に誇るのは、「子供たちとの遊便教室」での体験です。子供たちが自分で考えた郵便物を実際に送ってくることも多く、それは「かさ郵便」といったユニークなものもありました。「そうした手紙には、送った人のぬくもりや工夫が感じられる」と渡辺さんは言います。

OMOSHIRO(おもしろ)と切手で書かれた郵便物

OMOSHIRO(おもしろ)と切手で書かれた郵便物

郵便文化の新たな一面を紹介

「おもしろ遊便館」は、訪れる人々にとって郵便の新たな一面を紹介する場所でした。展示品には全国各地の郵便局での試みも含まれており、早来雪だるま郵便局の変形風景印や函館中央郵便局の「スルメール」など、北海道内でもユニークな郵便の取り組みが多く行われていたことを知ることができました。渡辺さんにとっても、こうした他の郵便局の試みは、自分のアイデアを広げる励みとなったようです。

ところせましとならべられる郵便物

ところせましとならべられる郵便物

惜しまれつつ閉館した「おもしろ遊便館」

渡辺さんが情熱を注いで運営してきた「おもしろ遊便館」ですが、長い間続けてきた展示活動も近年(2024年頃)、閉館することとなりました。展示されていた2000点に及ぶアイテムは、郵便の可能性を再発見させるだけでなく、訪れる人々に驚きと発見の時間を提供していました。「おもしろ遊便館」が果たした役割と、その精神は多くの人々にとって特別なものとなったと言えるでしょう。

俳優の竹下景子さんなど、芸能人・文化人とも文通を続ける。

俳優の竹下景子さんなど、芸能人・文化人とも文通を続ける。

これからも語り継がれる「おもしろ遊便」

「おもしろ遊便館」が伝えたものは、「郵便物はただの通信手段ではなく、人と人をつなげる可能性を持つ」という考え方でした。渡辺さんが語る「手紙は元気を与える、勇気を与える」という言葉には、郵便の本質が詰まっています。訪れた人々に新しい視点を提供し、郵便物の多様性とその魅力を再発見させてくれたこの場所は、これからも多くの人々の記憶に残り続けることでしょう。郵便文化の「遊び心」は、きっと今後も広がり続けるに違いありません。

ご夫婦で取材に応じる渡辺信雄さん

ご夫婦で取材に応じる渡辺信雄さん

所在地:〒005-0852 北海道札幌市南区常盤2条1丁目5−3(囲碁・おもしろ遊便館)

【イチバン!!】えっ!?そんな物も送れるの?面白すぎる郵便物を集めた博物館が札幌にあった!
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