旧大阪中央郵便局の概要
大阪中央郵便局(大阪市北区中之島2丁目)は逓信省技師の吉田鉄郎が設計した局舎の1つで、昭和14年3月に竣工しました。東京中央郵便局が白系統であるのに対して、大阪中央郵便局が黒系統の外壁となっているのは、防空上の理由と当時の大阪のスモッグを考慮して決定されたとされます。施工は清水建設の前身にあたる清水組です。鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)の地上7階・地下1階でした。
大阪中央郵便局と東京中央郵便局
ちょうど東京中央郵便局(昭和6年12月竣工)が東京駅前の景観の一部をなしているように、大阪中央郵便局も大阪駅に隣接しており、周囲の景観の一部を構成しています。設計も同じ吉田鉄郎であることから、帝都の中央郵便局と商都の中央郵便局のようなかたちで並び称せられてきました。しかし、大阪中央郵便局は吉田鉄郎の局舎建築の集大成であり、また戦後の郵政建築につながる「鉄筋コンクリート造の庇」の初出でもあることから、逓信建築ファンのあいだでは大阪中央郵便局を重視する向きもあります。
郵政建築研究所の観音克平氏は「こうした彼の建築作法の集大成として、大阪中央郵便局(昭和14年)が完成する。平面的には、合理主義に徹した整合性の極致が見られ、立面的には、柱、梁型を素直に露出させた極めて簡明直裁な日本的な構成である。東京中央郵便局のアルカイックな大らかさに比して、計算し尽くされた緊張感が漂う」(『郵政建築』建築画報社、2008年、20頁)と評しています。
残念ながら、大阪中央郵便局は2012年3月から解体工事が行われました。現在はかつてのロビー部分を含む玄関廻りの3階まで、サイズにして幅18m×奥行き18m×高さ16mが、アトリウムに保存されています。
(参考)日本の近代建築を支えた逓信・郵政建築
講演:観音克平氏 2014年11月3日