レトロ郵便局の旅展~建物からたどる地域と郵便の物語~
2026年10月3日(土)から11月23日(月・祝)まで、東京・押上の郵政博物館で、「レトロ郵便局の旅展~建物からたどる地域と郵便の物語~」を開催します。
本展は、郵政博物館の企画展「局舎の窓から射す陽光(ひかり)~逓信建築の機能美~」の関連展示です。企画展では、建築物としての「窓」と郵便局の機能としての「窓口」という二つの視点から、局舎建築の変遷を紹介しています。関連展示では、私が全国各地を訪ねて撮影してきた郵便局舎の中から20か所を取り上げ、その建物と地域の物語を写真と資料で紹介します。
郵便局の建物から、町の歴史をたどる
郵便局は、手紙や荷物を届けるだけでなく、地域の暮らしを支える身近な公共施設として全国各地に設けられてきました。なかでも明治・大正・昭和に建てられた郵便局舎には、洋風建築への憧れ、土地の材料や大工の技、局長や住民の思いが刻まれています。
私はこれまで全国を訪ね歩き、現在も営業を続ける郵便局から、役目を終えてカフェ、資料館、宿泊施設などに生まれ変わった建物まで、その姿と来歴を記録してきました。レトロな建物を見る楽しさは、単に懐かしさに浸ることだけではありません。建物を手がかりに近代郵便の歩みや地域社会の歴史を振り返り、二度と同じものを造ることのできない建築を未来へどう残すのかを考えることにもつながります。

全国20か所の「レトロ郵便局」を旅する
会場では、北海道から鹿児島県まで20の郵便局舎を、大型パネルで紹介しています。石造、木造、和風、洋風。現役の郵便局、文化財、博物館、カフェ、宿泊施設――。それぞれ異なる道を歩んできた建物を、北から南へ旅するようにご覧いただけます。
1 旧石山郵便局|北海道
昭和15年(1940)、地元産の札幌軟石を用いて建てられた局舎です。郵便局移転後も建物は残され、現在はカフェや物販、催事などに利用される地域交流の場となっています。
2 旧羽後黒川郵便局|秋田県
大正7年(1918)、三浦家住宅の一部を改造して開局しました。現在は国の重要文化財「三浦館」を構成する建物として、大正・昭和期の郵便局の姿を伝えています。
3 旧肘折郵便局|山形県
昭和12年(1937)、肘折温泉街に建てられた木造洋風局舎です。「〒」マークを組み込んだ窓の意匠などが残り、温泉街のランドマークとして保存されています。
4 東大芦簡易郵便局|栃木県
昭和17年(1942)築と伝えられる木造局舎を、現在も郵便局として使用しています。田園と小川に囲まれた風景の中で、昭和期の郵便局の面影を今に伝えます。
5 旧箱根宮ノ下郵便局|神奈川県
大正3年(1914)、富士屋ホテルの向かいに建てられ、温泉地の郵便・通信を支えました。現在は「Hakone HOSTEL1914」として、100年以上を経た空間に旅人を迎えています。
6 旧小平小川郵便局|東京都
明治41年(1908)築の木造平屋建てで、現存する郵便局舎として最古級の一つです。復原修理を経て、小平市指定有形文化財として公開されています。
7 旧勝沼郵便電信局|山梨県
明治30年代初頭に建てられた、和風の技術と西洋風意匠を組み合わせた木造洋風建築です。大正期に銀行へ転用され、現在は旧田中銀行博物館として公開されています。
8 宇治山田郵便局|愛知県
明治42年(1909)、伊勢神宮外宮前に建てられた木造洋風局舎です。現在は博物館明治村に移築保存され、国の重要文化財に指定されています。
9 旧阿智郵便局|長野県
昭和8年(1933)、旧三州街道沿いに建てられた木造局舎です。郵便・電話の資料館として再生され、令和7年(2025)にはリニューアルオープンしました。
10 旧小杉郵便局|富山県
大正13年(1924)、旧北陸道の宿場町に建てられました。郵便局から文化施設、古書店へと用途を変えながら、現在も町の文化を伝える場所として残されています。
11 三波簡易郵便局|石川県
能登半島東岸の海沿いに建つ、昭和16年(1941)開局の郵便局です。令和6年能登半島地震では一時休止しましたが、営業を再開し、現在も地域の日常と復興を支えています。
12 旧八幡郵便局|滋賀県
大正10年(1921)、近江八幡に建てられたウィリアム・メレル・ヴォーリズ設計の局舎です。市民による保存再生活動を経て、現在は公開やイベントに活用されています。
13 旧米子角盤町郵便局|鳥取県
昭和和10年(1935)築の木造洋風局舎で、郵便局の後には古書店として長く親しまれました。現在は「YORAIYA角盤」として再生され、令和7年(2025)には国の登録有形文化財となりました。
14 旧江津郵便局|島根県
明治20年(1887)頃に建てられたと伝わる、全国でも最古級の郵便局舎です。国の登録有形文化財として、江津本町甍街道の歴史的景観を形づくっています。
15 中京郵便局|京都府
明治35年(1902)、京都郵便電信局として建てられた赤煉瓦の局舎です。昭和51年(1976)の改築では外壁などを保存しながら内部を更新し、現在も現役の郵便局として使われています。
16 下関南部町郵便局|山口県
明治33年(1900)、赤間関郵便電信局として建てられた煉瓦造局舎です。関門海峡の郵便・電信を支え、現在も国内最古の現役郵便局舎として使用されています。
17 旧引田郵便局|香川県
昭和7年(1932)、「風待ちの港」引田に建てられた洋風局舎です。現在は「カフェ・ヌーベルポスト」として、古い町並みを訪れる人びとの憩いの場となっています。
18 旧豊前黒土郵便局|福岡県
現在の局舎は昭和12年(1937)に建てられました。郵便局としての役割を終えた後、建物の趣を生かして改修され、家具店とカフェに活用されています。
19 旧来民郵便局|熊本県
昭和11年(1936)に建てられ、長く地域の郵便を支えた木造局舎です。現在は「ゆーくんち」の愛称で親しまれ、移住相談や地域交流の拠点として活用されています。
20 旧鹿籠金山郵便局|鹿児島県
明治36年(1903)、鹿籠金山の地に建てられた木造局舎です。30年以上の空き家期間を経て「山猫瓶詰研究所」として再生され、ショップ、カフェ、宿を備えた施設となっています。
20の建物、20通りの「残り方」
20の局舎を見ていくと、古い郵便局を未来へ残す方法は一つではないことがわかります。現役の郵便局として使い続けるもの、文化財や博物館として保存・公開されるもの、カフェや書店、宿泊施設として新たな役割を与えられたもの。そして、市民活動や地域交流、移住支援の拠点として、再び町の人びとを結びつけている建物もあります。
用途が変わっても、そこに人が集まり、建物の来歴が語り継がれていくならば、それもまた一つの継承のかたちです。
今回紹介する20の局舎には、それぞれ異なる時代と土地の歴史があります。その違いを楽しみながら、郵便局という建物が、地域の人びとにどのように使われ、記憶され、次の世代へ受け継がれてきたのか。そんなことにも思いを巡らせていただければと思います。

「窓」から見る郵便局、「旅」から見る郵便局
郵政博物館の企画展「局舎の窓から射す陽光~逓信建築の機能美~」では、郵便局舎の「窓」に焦点を当て、光や風を取り入れる建築上の工夫と、人びとを迎える「窓口」の機能から局舎建築の変遷をたどります。
「レトロ郵便局の旅展」では、そこから少し視点を広げ、局舎の建つ町そのものを旅するように、建物と地域との関係をたどります。
窓、玄関、カウンター、「〒」の意匠、建築材料、そして周囲の町並み。建物の表情を味わいながら、窓口を訪れた人びと、そこで郵便を支えた人びと、そして建物を今日まで守り伝えてきた人びとの物語に思いを巡らせていただければ幸いです。
開催概要
レトロ郵便局の旅展~建物からたどる地域と郵便の物語~
会期 2026年10月3日(土)~11月23日(月・祝)
会場 郵政博物館 多目的スペース
メイン企画展 「局舎の窓から射す陽光(ひかり)~逓信建築の機能美~」
開館時間、休館日、入館料などの最新情報は、郵政博物館公式サイトをご確認ください。
講演会 2026年11月14日(土)14:00-15:30 「レトロ郵便局の旅」(板橋祐己)先着40名