ようこそレトロ郵便局へ

「レトロ」の効用

レトロとは「懐古的な・郷愁を感じさせる」を意味する英語(retrospective)などからできた言葉であり、(1)現在となっては有用性が低くなった過去のものに目を向け、これまでの歩みを振り返り、積極的に何かを学び取ろうとする態度に通じます。(2)さらにレトロには自分の幼少期の思い出を振り返るといった意味合いもあるのではないでしょうか。こうした2つの方向性から、明治・大正・昭和の「レトロ郵便局」*と真面目に向き合おうとするのが、このサイトの目的です。

*本サイトで「レトロ郵便局」という場合、三等郵便局の局舎として建てられた大正3年から昭和16年頃までの建造物を典型とします。本サイトでは文化財の基礎資格である竣工から半世紀を経過したもの、金融機関や宿泊施設などの歴史的建造物を郵便局舎として転用したものなども含めて紹介していきます。

払沢の滝に向かう参道にある旧檜原郵便局舎・森のささやき(東京都檜原村)

郵便創業期の施設の現存例

日本における郵便創業は明治4年3月1日(1871年4月20日)のことです。日本史の教科書で郵便の父が前島 密であることを習ったのを思い起こす方も多いでしょう。当時の郵便施設は地域の有力者などの施設を転用したものがほとんどで、初めから郵便施設にするために新築されたものは例外的でした。

当時の郵便施設として、たとえば茨城県取手市の旧取手宿本陣染野家住宅や群馬県高山村の平形家住宅門屋(旧中山郵便局)などのように現存する例もあります。このような江戸時代から明治維新の頃にかけての商家や武家屋敷の一部もしくは土蔵などの施設を郵便局舎に流用した例は「レトロ郵便局」という言葉から思い浮かぶものとは異なりますが、広義の「レトロ郵便局」として当サイトでも紹介していきます。

三国街道沿いに今も残る平形家住宅門屋・旧中山郵便局(群馬県高山村)

三等局・特定局だった局舎

一般に「レトロ郵便局」という言葉から連想されるのは、のどかな田舎町に残る大正・昭和の郵便局舎のほうではないでしょうか。地域の有力者が私財を投じて腕利きの大工を雇い、地域のランドマークにふさわしい擬西洋風で在来工法の郵便局舎を設けた例が日本各地にみられ、その多くがかつての三等郵便局(旧特定郵便局の前身)でした。もっとも戦前にできた木造もしくは木骨の郵便局舎が現役の郵便局舎として営業している例は全国的にみても約20例前後と少なく、かつて郵便局舎だった建造物のほうが数として多く、当サイトで扱うもののメインとなります。

旧辻川郵便局

移築されたのち、1階はブックカフェ、2階はホテルとして営業中の旧辻川郵便局(兵庫県福崎町)

文化財保存・活用の新しいかたち

いま、レトロ郵便局が注目されている背景には、平成8年(1996年)に始まった登録有形文化財の文化財登録制度があります。50年を経過した歴史的建造物のうち,、一定の評価を得たものを文化財として登録し、 届出制という緩やかな規制を通じて保存が図られ、活用が促されています。令和2年1月時点で登録有形文化財(建造物)は12,443件を数え、SNSの普及・浸透なども手伝って、歴史的建造物、レトロ建築などがオンライン上の静かなブームとなっています。

こうした中、日本各地では郵便局長のご家族、郵政OG・OBの方、郷土史家や建築士などの方が立ちあがり、地域のレトロ郵便局舎をリフォームして、カフェやレストラン、古書店、地域の公共的な施設などの用途で活用している例が見られますし、将来的な保存・活用を目指して立ち上がる動きもあります。

当サイトでは、レトロ郵便局舎という再び造ることのできない作品群を「広義の文化財」とみなし、その保存や活用を考えるうえで参考になる事例を紹介するとともに、文化的な意義を正しく認識するための郵便史の知識を解説していきたいと思います。

妻篭郵便局に併設された郵便史料館(長野県南木曽町)

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