インド洋に浮かぶ英領セーシェル宛ての外信はがき|明治31年

英領セーシェル(セイシェル)の概要

ここでは19世紀末から20世紀初頭の時期の稀少あるいは特殊な宛先の外国郵便を紹介し、万国郵便連合(UPU)のネットワークの中にある日本に焦点を当てていきます。

セーシェルはインド洋に浮かぶ、人口8万人の島嶼国です。面積は種子島ほどに過ぎず、アフリカ圏の国としては人口・面積ともに最小規模となっています。フランスが1756年に領有した当時の仏蔵相セシェルからセシェル諸島と名付けられました。現国名は英語読みしたもので、「セイシェル」に近い発音です。セーシェルはフランス革命の時代に、イギリスの支配下に入り、ナポレオン戦争の講和条約でイギリス領が確定。モーリシャスの属領となりました。最初の郵便局は1861年に首府ヴィクトリアに開局し、モーリシャス切手が使用されました。セーシェルが一番切手を発行したのは1890年4月のことです。1903年8月からはイギリス直轄領の植民地となりました。現在の公用語は英語、フランス語に加えて、フランス語を簡略化したセーシェル・クレオール語の3つです。

セーシェル ココ・デ・メールの原生林

セーシェル ココ・デ・メールの原生林。世界的に珍しいフタゴヤシでよく知られている。

英領セーシェル(セイシェル)宛て外信はがき|明治31年の解説

本例は薄手唐草はがき(外信用はがき)3銭にU小判切手1銭を加貼しています。明治30年10月1日に外国宛てはがきは宛先にかかわらず、4銭に統一されました。また、明治31年3月1日には新料金に対応するうす墨連合はがき4銭が発行されていますが、本例はそれ以前の在庫もしくは買い置きした外信用はがきを使用したものと考えられます。

シュミットという名宛人から想起されるとおり、ドイツ人のあいだで交わされた通信となっています。差出人はフランス船舶で、セイロンのコロンボ、アフリカのザンジバルを経由して送達するようにする旨が記載されていますが、あくまで「希望」であり、その通りの経路で逓送されるとは限りません。手紙の日付は1898年12月7日であり、神戸を1898年12月8日に通過し、フランス船内印の日付は1898年12月9日となっており、コロンボの中継印は1898年12月28日の消印が押されています。その後、インド南部にある港湾都市トゥティコリンを経由してセーシェルに逓送されていることがわかります。トゥティコリンは同じくインド南部にある港湾都市マドラス(現在のチェンナイ)にその地位を奪われますので、この経路がいつまで使用されていたかは今後の検討が必要になるでしょう。

英領セーシェル(セイシェル)宛て外信はがき|明治31年

英領セーシェル(セイシェル)宛て外信はがき|明治31年

本例はタカハシスタンプ・オークションの646回オークションのロット396番として出品されました。人口10万人以下のアフリカの島嶼宛ての郵便物の存在は考えもせず、まさにRare Destinationという言葉がぴったりの例といえます。

セーシェル 木陰のアルダブラゾウガメ

セーシェル 木陰のアルダブラゾウガメ。ゾウガメの中でも世界最大級の大きさになる。

解説 「19世紀末~20世紀初頭、日本発」コレクションについて

万国郵便連合(UPU)の標語の1つに、「One world. One postal network」(1つの世界、1つの郵便ネットワーク)という言葉があります。国際連合の一機関である万国郵便連合によって加盟国間で国際標準化された郵便が行われており、逆の見方をすれば、日本(1877年加盟)の郵便局・郵便ポストはそれぞれに「1つの郵便ネットワーク」の端末としての役割を果たしているともいえます。

万国郵便連合の「One world. One postal network」は、コロンビアなどの中南米各国が加盟した1880年代に本格化し、中国(中華民国)が加盟した1914年もしくはヨーロッパの新興国が独自の郵政を組織した1918-20年頃に1つの完成をみたと考えられます。天野安治氏の「19世紀末~20世紀初頭、日本発」の収集*は、まさにそのネットワークの形成過程を日本発の外国郵便で再構成する試みであり、当時発行された日本の郵便切手類がどのように使用され、いかなる効力を持っていたかを検証できる格好の材料といえます。これらの収集品を通じてグローバルな視点から当時の日本の郵便局が果たしてきた社会的役割について理解を深めていければと考えています。(管理人)

*天野安治氏の厚意により資料協力いただいたマテリアルを中心に紹介していきますが、追加資料を含む場合もあります。サイト内の文責は管理人にあります。

資料協力:天野安治(あまの・やすはる)
(公財)日本郵趣協会 名誉会員・尾道学研究会会長。1932年広島県尾道市に生まれる。1941年切手収集開始。日本切手、ステーショナリー、消印を専門収集。『改訂新版 エンタイアを読む』(日本郵趣出版、1984年)は多年にわたり郵便史収集のバイブルとして親しまれ、今なお強い影響力を持っている。

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