改めて「郵便局」とは
日本における郵便、郵便貯金、郵便為替、郵便振替、そして簡易生命保険からなるいわゆる郵政三事業の業務は、窓口をはじめとする様々な場所で手がけられています。昭和23年（1948年）に制定された郵政省設置法*（昭和23年法律第244号）によりますと、地方郵政局が担うべき業務の中でも、特に現業に関わる部分がこの法律によって定められています。また、現行の日本郵政株式会社法では下記のように定められています。
日本郵政株式会社法（平成17年法律第98号）
第五条 会社は、その業務の運営に当たっては、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務を利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的にかつあまねく全国において公平に利用できるようにする責務を有する。
日本の郵便事業がスタートしたのは、周知のとおり明治４年３月１日（1871年４月20日）のことです。その当初から、郵便役所と郵便取扱所という二つの形態でサービスが提供されていました。そして、その名称が「郵便局」という呼称に変わったのは、明治8年（1875年）１月１日のことでした。明治6年（1873年）には、それまでの郵便役所を一等郵便役所と位置づけ、また郵便取扱所の中から選ばれた270か所を二等から四等までの郵便役所に昇格させ、その長を取扱役と名付けました。明治8年に「郵便局」という新しい名称が採用された時、一等から四等までの郵便役所は、それぞれ一等から四等の郵便局として再編され、郵便取扱所は新しく五等郵便局とされました。さらに、明治19年（1886年）には、郵便局の体系を三等級制に整理し、郵便取扱役がいた局を三等郵便局とし、取扱役の職名も三等郵便局長に改称されました。この制度の改革が、現在のエリアマネジメント局につながる特定郵便局の基盤を築いたのです。
*平成13年1月5日までは郵政省設置法。平成13年１月６日から平成15年3月31日までは郵政事業庁設置法（平成11年法律第92号）による。平成15年４月１日からは日本郵政公社法（平成14年法律第97号）で定められていた。
滋賀県・旧醒井郵便局
「郵便局」という呼称の初出
ところで郵便局という言葉が使用された最初はいつからかご存じでしょうか。明治６年８月６日に締結された日米郵便交換条約で「postoffice」の訳語として郵便局が使用されたのが公的な文書における初出として知られています。それまでは郵便役所と郵便取扱所という２つの現業機関名が郵便事業の担い手でした。今、私たちが親しんでいる郵便局という呼称が条約の訳文の中に現れたものであることや、外国郵便制度の創設の中で定められた呼称であることは重要だといえるでしょう。
日米郵便交換条約（図版協力：大高正志氏）。第一条の本文中に「郵便局」の文字が読める。
日米郵便交換条約がもたらしたもの
明治８年１月５日に、横浜郵便局とサンフランシスコ郵便局が郵便物の交換本局として指定され、日本は正式に外国郵便の取り扱いを開始しました。この時、約15グラムまでの書状の料金が日本からは15銭、アメリカからは15セントという形で設定され、日本は外国郵便用に「鳥」をデザインした３種類の切手（鳥切手）を発行しました。これにより、日本の切手が貼られた手紙が外国で、また外国の切手が貼られた手紙が日本で配達されるようになりました。
明治8年の外国郵便の実績は、差出が160,000通、到着が140,000通でした。日本とアメリカの間の条約は、アメリカが他の国々とも郵便交換の条約を結んでいたため、アメリカを経由して日本からアメリカ以外の国々にも手紙を送ることが可能になりました。この条約の結果として、アメリカは日本にあったアメリカ郵便局を廃止しました。外国郵便の開始に合わせて、郵便役所や郵便取扱所の名称を「郵便局」に改めることも行われたのです。
なお、外国郵便の交換本局となった横浜郵便局は現在の横浜港郵便局の前身にあたります。そのため、横浜港郵便局には外国郵便の始まりを説明するプレートが設置されています。
現在の横浜港郵便局。明治８年１月５日（１月１日）の外国郵便の創業局でもある。
ここでは豆知識の域を出ませんが、日本の郵便局は時代とともに進化し、現在に至るまで国民生活の重要な一部として機能しています。また、郵政三事業は、私たちの生活に密接に関わるサービスを提供し続けており、その利便性と重要性は計り知れません。窓口での対応だけでなく、地域社会への貢献や、時には温かい人間関係の構築にも一役買っているのが、日本の郵便局の特色とも言えるでしょう。本サイト「レトロ郵便局」ではこうした郵便局の役割をさらに多面的な見方から語っていきたいと思います。