はじめに
ここでは、明治16年から明治28年までの郵便局の辞令類を取り上げます。ここでは岩屋堂(江刺)郵便局の事例としてご覧いただければと思います。三等郵便局長の処遇や栄典については、『特定局大鑑 第1巻』(小池善次郎、1950年)の第三扁において網羅的な研究が行われているので、そちらに譲りたいと思います。
農商務省駅逓局時代の給与辞令
おそらく只野善作氏が岩屋堂郵便局の初代局長だとみられています。明治15年までは府県からの辞令でしたが、明治16年からは中央官庁による辞令に変わります。明治16年3月1日は四等郵便取扱役(郵便局長)の処遇であり、月に50銭の給与が支給されていたことがわかります。
逓信省時代の辞令書
高野清右衛門(2代目局長と推定)への任命書です。明治20年4月28日付で三等郵便局長に任命されています。
高野清右衛門が判任官五等となった旨が記された証書です。判任官は天皇の委任を受けた各大臣・各地方長官など行政官庁の長によって任命された官吏であり、高等官(親任官・勅任官・奏任官)に下位に相当します。
高野清右衛門に対して特別に金二円が支給されたときの辞令です。明治24年12月19日付となっています。
高野清右衛門が依願免(退任)となったときの辞令と退職金六円を支給する旨が記載された辞令です。いずれも明治28年12月14日付です。
(荻田栄治さんのご厚意により収集された写真類をレトロ郵便局に掲載させていただきました)
資料提供:荻田 栄治(おぎた・えいじ)
交通史研究者・郵趣家。1941年に岩手県江刺郡岩谷堂町(現 奥州市)に生まれる。日本郵趣協会県南支部(岩手県)結成に尽力し、支部長に就任。2004年から10年にわたり江刺市行政区長(岩谷堂3区)を務めた。主な著作に1980年『江刺の郵便誌』が処女作。近著に2018年『北上川に架かる橋』がある。