占領下の郵便
アメリカの対日占領政策は政治経済はもとより各般に及び、連合軍最高司令官総司令部(GHQ)は、郵便を含む通信事業に対してもさまざまな場面で指令や覚書を出してきました。それを主導したのがGHQの特別部局として設置された民間通信局(CCS)です。
日本国憲法施行記念(昭和22年)の使用済。
郵便検閲の実施
占領政策を進めるにあたって、日本国民の不満やさまざまな社会的な動きなどを察知するために、占領軍の検閲がはじまりました。実施機関は民間諜報部の下にある民間検閲局で、8千人もの日本人が検閲作業にかかわったともいわれています。
郵便・電報・刊行物などに「金魚鉢」を思わせる形状の検閲印が使用された。
追放切手の指定
GHQから「新憲法も実施されているにもかかわらず、軍国主義や神道などを表す切手類が依然使われているのは不適当ではないか」と注意を受けた逓信省は、19の図案の切手とはがきを昭和22年9月から使用禁止しました。いわゆる「追放切手」(昭和切手の一部や楠公はがきなどが該当)です。
京都郵便局で昭和20年8月15日に差し出された楠公はがき。戦後は追放切手と同じ扱いになった。
文:近辻喜一(ちかつじ・きいち)
郵便史研究会会長。『新版・明治郵便局名録』(鳴美、2015年)校訂者として知られ、一般の方にも親しみやすい郵便史の解説で定評がある。多摩地域を中心とする郷土史研究者としての顔も持つ。