旧初狩郵便局の概要
初狩郵便取扱所ができたのは、他の甲州街道沿いの局所と同じ明治5年7月1日(1872年8月4日)のことです。郵便創業期の文書には逓送請負人として富田右内と奥脇市右衛門の2氏が連名で記載されており、下初狩の初代郵便取扱役(郵便局長)には富田右内が任命されています。下初狩郵便取扱所は明治7年(1874)中に「初狩」と改称しました。明治8年(1875)1月1日には初狩郵便局となり、昭和の初めまで笹子・初狩の2村を管轄していました。明治29年(1896)12月に中央線の笹子隧道の開削が始まると、初狩郵便局は笹子村字黒野田(隧道の東京側)に仮郵便局を設け、明治36年(1903)2月の竣工までその通信事務を担っています。
旧初狩郵便局の詳細情報
初狩郵便局は明治43年(1910)11月1日、初狩駅前にアーチ型の庇を持つ擬西洋風建築の局舎に一新されました。さらに大正14年(1925)5月15日に旧本陣の下初狩三〇七番地、すなわち下初狩宿の本陣跡(今日の「本陣跡・古民家みどう本陣」)へと移転したとみられます(『局所原簿』(郵政省)、『山梨県北都留郡誌』111頁の記述を総合して判断)。以下の写真は「本陣跡・古民家みどう本陣」の「郵便の間」で、かつての初狩郵便局のあった場所にあたります。
初狩郵便局は作家・山本周五郎とゆかりのある郵便局でもあります。昭和46年まで約半世紀にわたって初狩郵便局長を務めた奥脇賢吾氏は明治35年(1902)10月生まれで、清水三十六(山本周五郎)は明治36年6月生まれですから、年齢差は1つ違いです。幼い頃は近所の子どもとして一緒に遊んでいたようです。山本周五郎の生家は明治40年8月の大水害で消失してしまったため、ゆかりのある「みどう本陣」を山本周五郎の生誕の地としています。なお、旧本陣を改築した局舎は昭和38年(1963)3月末まで利用され、初狩駅前に移転しました。その後、初狩郵便局は昭和58年(1983)8月28日に集配廃止し、大月郵便局が引継いでいます。
旧初狩郵便局(みどう本陣)のアクセス
所在地
〒401-0022
山梨県大月市初狩町下初狩307
大正14年から昭和38年にかけての初狩郵便局舎。
アクセス
JR東日本・中央本線「初狩駅」から徒歩4分
レンタルスペース「本陣跡・古民家みどう本陣」として運営されています。詳細はウェブサイトをご覧ください。
https://www.midohonjin.com/
(下掲の図版は旧本陣の上段の間と2階に保存している駕籠)
初狩郵便局の基本情報
平成の終わりに初狩駅前から中初狩に移転しました。
所在地
〒401-0022
山梨県大月市初狩町中初狩301-1
初狩郵便局の沿革
明治05.07.01 設置 郵便取扱所 設置名称「下初狩」
明治07.-.- 現名称に改称
明治08.01.01 五等郵便局に改定
明治19.04.26 三等郵便局に改定
昭和16.02.01 特定郵便局に改定
昭和58.08.28 集配廃止 引継:大月
*沿革は『日本郵便局名鑑 』森 寿博 編著/武田 聡 追補/鳴美、2021年より。