(トップの画像は、昭和40年頃の宮城県 江別郵便局)
取集と配達
無集配郵便局で引き受けた郵便物や郵便ポストに投函された郵便物を集配局まで運搬する作業、集配局から受取人へ送り届ける作業は、明治・大正・昭和・平成・令和と本質的には変わりません。しかし東芝が平成10年に郵便物を配達する順番に並び替える作業(道順組立作業)の自動化に成功したことや、2000年代以降、輸送業務の効率化のため地域区分局の再編が行われていることから、かなりこれまでと様相が変わってきています。
ここでは「レトロ郵便局」における関心に基づき、昭和60年頃の定義に沿って集配事務(取集・配達)に関わる用語をまとめたいと思います。
集配に関する用語
・集配
郵便物の取集(Collection)及び配達(Delivery)の総称。集配郵便局の業務内容からみると取集は業務の開始点、配達はその終了点である。両者は直接の関連性はないが、同じ外務作業であることからこのように総称されている。
・取集
無集配局で引き受けられ、又は窓口に差し出された郵便物及び郵使差出箱に差し入れられた郵便物を受持集配局の取集担当者等があらかじめ定められた区画、順路、度数、時刻等に従って当該局まで運搬すること。取集便は、通常郵便物と小包郵便物とを併せて設定するのが原則であるが、取集荷量又は差立処理の都合等で通常郵便物と小包郵便物とを区別して、単独に設定したり、無集配局の窓口引受の郵便物が著しく多い場合に無集配局のみを対象として設定することがある。このほか大取集を行うことがある。
・配達
郵便物に記載された受取人に郵便物を送り届ける行為をいう。受取人に直接交付する方法とあて所配達の方法があり、後者を原則とする(郵便規則73)。特別の方法として次のような方法がある。
- 同一建物又は同一構内の管理者の事務所又は受付に配達する方法(同規則75)。
- 2名以上にあてた郵便物を1名のみに配達する方法(同規則76)。
- 郵便物のあて所において、受取人又はその代人に直接交付する方法(同規則94③・④)。
- 郵便私書箱に配達する方法(同規則80)。
- 郵便局に留め置いて、受取人の出局を待って郵便局の窓口で交付する方法(同規則74、7の51②、Ⅲ、841、84の2、851、861、1161)。
- 受取人の指定した場所に配達する方法(同規則85Ⅲ)。
- 郵便局の指定する場所に配達する方法(同規則85Ⅳ)。
- 特別送達郵便物についての特別の送達方法(郵便法66、民事訴訟法169、171)。
配達便は、配達区の種類及び配達時刻の異なるごとに通し番号をつけて呼ぶ(例通常配達1号便、速達配達2号便)。
配達資料の内容と現行化
配達区内の居住者に関して配達業務上必要な情報を一定の様式により取りまとめた資料。通区訓練・臨時の担務変更。非常勤職員による作業・事故郵便物の処理等の便に供するために作成し、次のものがある。
なお、いずれの資料も現行化が図られていなければならない。
1.基本資料
- 転居届記録簿(転居ファイルを含む。
- 大区分表
道順組立大区分の区分日の区切りを明確にし、誰でも容易に大区分作業ができるように、大区分口ごとの地域ないし世帯名を記載したものであって、道順組立だな上の表示板(大区分額)に常時掲出する。 - 配達原簿(道順ファイル及び道順組立仕切カードを総称する)。
配達原簿は、道順組立作業を標準化し、合理的に行うため配達順路に添って居住者の住居、氏名その他必要事項を列記して作成される最も基本的な資料である。 - 配達地図
配達区内の道路、配達箇所及び配達道順を図示し、各戸の世帯主の氏名。屋号。商号。その他配達上必要な事項を記載した地図である。ビニール・カバーの中に入れておき、道順組立及び局外配達に使用する。
2.補助資料
基本資料を補充するため、必要に応じて作成し活用するもの。
- 居住者カード・居住者名簿
- 同姓者名簿
- 団地(アパート)名簿
- 音別ファイル(名簿)
- 大区分早見表
- 簡易地図
- 混合用地図
- 年賀郵便物道順組立整理箱用仕切カード
- 住居表示旧新(新旧)対照表
集配に関する特に専門的な用語
大取集
2以上の郵便区を併せて又は1郵便区とほかの郵便区の一部を併せて設定した取集区。1都市内に集配局が2局以上ある場合、主要受渡局において、他の集配局との郵便物継越作業のロスを省き、差立処理を集中する場合、都市内集配局のうち局舎事情等が悪く取集郵便物の差立処理が困難なために隣接集配局において取集及び差立処理を集中して行う場合、速達扱いとしない小包郵便物等の差立処理を集中して作業を機械化する場合等に行われる(郵便集配運送計画規程10:通達昭26.10.18郵施842号)。
単配
特定の種類、又は取扱いの郵便物を単独に配達すること。速達扱いを除いて、その他の郵便物はすべて併せて同一便で配達(併配)することが原則であるが、物数等の関係上併配が困難な場合は通常郵便物と小包郵便物に区別して単独の配達区を設定し、また、書留扱いの郵便物
だけの配達区を設定する(郵便集配運送計画規程8、9)。一般には、小包単配、書留単配等と呼ばれる。
集配分室
集配事務を取り扱う分室である。配達業務だけを行うものと窓口機能を併せもつものがある。集配分室は、郵便局の位置が偏在していたり、受持区域が広大であったり、遠隔地域が著しく発展していたり、交通不便の地形であった場合あるいは局舎が狭あいなための作業難を救済するために設けられる。年末年始仮設分室(年末年始繁忙期に増加する郵便物を処理するため臨時的に設けるもの)とは異なる。
集配事務の開始・転換・廃止
地況の発展等に伴い、新たに集配局を設置し、この集配局において郵便物の集配事務を始めること及び集配業務上適当と認められる位置に無集配局がすでに設置されている場合、この無集配局に集配事務を移管し集配局とする措置をいう。
過疎化の進展、郵便集配業務の合理化のため、集配局の統合を実施した結果、集配局から無集配局となることを「集配事務の廃止」という。
同一郵便区内又はその周辺郵便区において、集配事務の開始及び廃止が同時に実施される場合、これを「集配事務の転換」という。
集配事務の開始及び廃止は郵便局長の承認により実施することとなっている(郵政省職務規程14、25)が、一定の条件を具備する場合には郵政局長限り実施できる(通達昭45.10.23郵郵集67号)。
85条適用地
特に交通困難であるため周年又は一定期間内通常の方法による郵便物の配達をしない地域。郵便規則85条に基づくのでこの名がある。この地域にあてた郵便物は、郵便局に2か月間留め置き、受取人の出局をまって交付するが、受取人が配達局の長に郵便物の配達をする地域内にその郵便物を受け取るべき場所を定めて請求したときは、その指定した場所に配達する。また、85条適用地域内であっても配達局の指定する場所に集合郵便受箱を設置した場合は、普通通常郵便物(料金未納不足のもの及び受箱に入らないものを除く。)に限り、受箱に配達する。85条適用地は、具体的には、①道路けん悪、又は通行困難な集落及び渡航困難な集落、②配達困難で、最も近い集配順路上から2キロメートル以上を隔て、1か月通常郵便配達物数がおよそ60通未満の集落、③lか月通常郵便配達物数がおよそ60通未満の河川、港湾、及び湖沼である(郵便集配運送計画規程22)。
郵便区
集配局が郵便物を配達すべき受持区域。全国どの地域でも、いずれかの集配局の郵便区に属する。原則として集配運送上の利便、要員の経済的効果的配置等を考慮して、行政区を基としてこれを分割しないように設定される。ただし、道路、交通その他の事由により分割することがかえって郵便物の集配上利便な場合又は1行政区内に集配局が2以上設置される場合は、行政区を分割して設定することがある(郵便集配運送計画規程4.5)。
*ここに示す郵便局の定義や用語解説は『最新 郵便用語事典』(郵便用語事典研究会/編、ぎょうせい/発行、昭和61年)によった。