三等郵便局の誕生
郵便局に一等から五等まで等級を付けていた時代もあったが、地方逓信官制が敷かれた明治19年3月から郵便局は三等級制になりました。ごく簡単にいえば、官立の一等局は大きな都市に、同じく二等局は大都市に次ぐ中小都市に、請負制の三等局は最寄りの町や村に、それぞれ設置された郵便局のことです。三等局の郵便取扱役の名称も郵便局長になりました。
明治19年度の局数をみると、一等局が35局、二等局44局、三等局3972局でした。実に98%が三等郵便局でした。
三等郵便局長の要件
三等郵便局が誕生すると、それに関連するさまざまな規定類が制定されました。例えば、明治21年4月に「三等郵便局長採用規則」が、翌月には「三等郵便局長服務規約」がそれぞれ制定されていることが挙げられるでしょう。当時の三等郵便局長の主な要件を列挙すれば、次のようになります。
一:三等郵便局長は判任とし、満二○歳以上の男子であって、所定の資産を所有し、なるべく局所所在地に居住する者から適材を選ぶ。
二:三等郵便局長には俸給を支給せず、手当を支給する。
三:三等郵便局の局舎の土地および建物は、局長が義務として無償提供し、これを確保する。
四:従業員は三等郵便局長が随意に採用するものとし、局長が適宜の給与を支給する。
五:三等郵便局の運営経費は渡切りとし局長に支給し、その支給額をもって人件費、物件費いっさいを支弁する。
文:近辻喜一(ちかつじ・きいち)
郵便史研究会会長。『新版・明治郵便局名録』(鳴美、2015年)校訂者として知られ、一般の方にも親しみやすい郵便史の解説で定評がある。多摩地域を中心とする郷土史研究者としての顔も持つ。