日本最初の切手が誕生する舞台裏について|明治4年

日本最初の郵便切手―竜文切手4種

明治4年3月1日(1871年4月20日)、銭四十八文、銭百文、銭二百文、銭五百文の郵便切手が発行されました。時間賃銭表は、目方五匁までの書状一通分の賃銭で、五匁以上十匁までは一通半、十匁以上十五匁までは2通分の賃銭が必要になります。新たに追加された四十八文切手は、この重量便に使われるものです。

日本最初の郵便切手の図案は、偽造防止の観点から、前島案の「梅花」を複雑な「雷紋と七宝に囲まれた双龍」に変更されました。龍は天子すなわち天皇の象徴として使われ、太政官札にも描かれています。この和唐紙にエッチング凹版で刷られた美しい切手は「竜文切手」と呼ばれます。大蔵省出納寮は明治3年11月、太政官札などを印刷した実績をもつ、松田敦朝に切手の製造を命じました。東京に呼び寄せられた松田は、開運橋三井組構内の大蔵省紙幣寮の製造所で作業にとりかかりました。印刷機は在来の木製轆轤でした。こうして日本最初の郵便切手は発行されたのです。

日本最初の消印―検査済印

切手の再使用をふせぐための消印も用意されました。「検査済」と彫られた大型の消印が各駅に配備されるが、地名の無いのは不便なので、すぐに地名入検査済印に改められた。袋井や石部の実物印顆が現存します。

水口カバー

水口篆書体「検査済」で証印した書状。本例は明治4年3月3日の日本最古のカバーとして知られるもの。
(手嶋 康氏のご厚意により、本サイトに図版掲載させていただきました)

文:近辻喜一(ちかつじ・きいち)

近辻喜一さん郵便史研究会会長。『新版・明治郵便局名録』(鳴美、2015年)校訂者として知られ、一般の方にも親しみやすい郵便史の解説で定評がある。多摩地域を中心とする郷土史研究者としての顔も持つ。

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