旧軽井沢郵便局の概要
もともと軽井沢には、明治５年９月24日開局の軽井沢郵便取扱所（明治８年１月１日に郵便局に改定）がありましたが、明治17年８月15日に廃止され、それから数年間は近隣の追分郵便局が集配を行うことになります。軽井沢宿は中山道の宿場町であり、追分宿（信濃追分）・沓掛宿（中軽井沢）とともに浅間三宿を形成して栄えていましたが、明治維新で参勤交代がなくなると、宿場町は次第に衰退していきます。さらに明治17年５月に碓氷新道が開通すると、軽井沢宿は新道から外れてしまったのです。
軽井沢郵便局が再び設置されたのは、明治21年12月１日のことです。直江津・軽井沢間に官設鉄道が開通し、軽井沢駅が開業したのと同じ日に、三等郵便局が新設されました。このときできた郵便局は今日の軽井沢郵便局の前身にあたり、沿革の上でも直接のつながりがあります。さらに明治26年にアプト式を採用して碓氷峠越えを含む軽井沢・横川間の鉄道路線が悲願の開通をみると、旧軽井沢を中心に別荘建設が一気に進み、郵便需要も急増しました。ちょうど19世紀末に始まった世界的な絵はがきブームの時期にも重なり、軽井沢郵便局の発展を後押ししていきました。
その後、軽井沢郵便局は明治44年７月11日、二等郵便局に昇格しました。このときに新築された局舎は平成６年に軽井沢タリアセン（レジャー施設）に移築・復元され、国の登録有形文化財となり、現在は「明治四十四年館」として公開されています。建築は明治43年まで軽井沢駅の改築に携わっていた甲田良吉（鉄道大工、鉄道建設請負師）が手がけました。
旧軽井沢郵便局の詳細情報
軽井沢は長野県佐久地方に位置し、日本を代表する避暑地、別荘地として知られています。碓氷峠の西側に位置する軽井沢は古くから交通の要衝であり、浅間山が望める景勝地としての顔もあって重要な地位を占めていましたが、参勤交代がなくなると、宿場としての役割を失い、急速に衰退していきました。ところが、カナダ人宣教師のアレクサンダー・クロフト・ショーが明治18年に最初の避暑に訪れ、冷涼で豊かな森林のある風土を天然のサナトリウム（療養所）と高く評価して、「屋根のない病院」と表現しました。その後、軽井沢には万平ホテル、三笠ホテルなどの西洋式ホテルが登場し、保健休養地としての地位を確立していったのです。その軽井沢の情報通信を担った軽井沢郵便局は当時の文学者や知識人たちのサロンさながらの役割をも果たしていました。
旧軽井沢郵便局（軽井沢タリアセン）のアクセス
所在地
〒389-0111
長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉217
アクセス
タクシー：軽井沢駅(JR長野新幹線・しなの鉄道)または中軽井沢駅(しなの鉄道)下車、タクシー約10分
車：上信越自動車道碓氷軽井沢インターチェンジより車で約15分
バス：軽井沢町内循環バス：最寄停留所「塩沢湖」
バス：風越公園行きバス（軽井沢駅から往復）「塩沢湖」下車（夏季のみ運行予定）
軽井沢郵便局の基本情報
軽井沢郵便局は明治時代に一度廃止されましたが、鉄道の開通とともに再び設置されました。明治44年には二等郵便局に昇格された点において非常に特異な変遷を遂げた郵便局といえます。現局舎がある場所はかつてホテル万平があった場所にあたります。
所在地
〒389-0199
長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢767-3
軽井沢郵便局の沿革
明治05.09.－ 設置 郵便取扱所
明治08.01.01 五等郵便局に改定
明治17.08.15 廃止
明治21.12.01 設置 三等郵便局
明治30.08.21 三等郵便電信局に改定
明治36.04.01 三等郵便局に改定
明治44.07.11 二等郵便局に改定
昭和16.02.01 普通郵便局に改定
書留引受局記号：3171
為替番号：11070
＊沿革は『日本郵便局名鑑 』森 寿博 編著／武田 聡 追補／鳴美、2021年より。
＊上の写真は軽井沢のメインストリートにある軽井沢観光会（長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢739-2）です。ここにかつての明治四十四年館（旧軽井沢郵便局舎・昭和46年から軽井沢観光会館に転用）は所在しました。現在の軽井沢観光会館は平成７年に旧建物の外観のイメージを残して建て替えられたものです。
＊本稿執筆にあたり、軽井沢郵便局勤務経験もあった郷土史家・郵趣家の中島松樹氏による『軽井沢避暑地一〇〇年』（国書刊行会、1987年）を参照しました。また、軽井沢タリアセンの関係者を通じて、中島松樹氏の後継者である木下裕章氏にお引き合わせいただき、ご助力いただきました。